2017年7月26日、ビハール州の州知事ニティッシュ・クマール氏が辞職しました。
ビハール州の「歴史が動いた」瞬間です。
インドではどのニュースチャンネルもそのニュースばかり報道しています。
ニティッシュ氏が辞職したのは、州政府の連立解消のためです。
不正や汚職で追求されていた副知事のテジャスウィ・ヤダブ氏に辞職を促したところ、その父親であり、州政府の連立政権の党首ラルー・ヤダブ氏が息子の辞職に反対したのです。
そこで、一旦、ニティッシュ氏が州知事の職を辞職し、州政府を終了させてから、BJP党と再度連立を組むことにしたようです。
現在、新たな州政府の組閣のため、ニティッシュ氏率いるJDUと連立相手のBJPの幹部たちが話し合いをしています。
JDUとBJPは、連立解消してから4年ぶりの再連立となります。
再びニティッシュ氏が州知事となり、BJPのスシール・モディ氏が副州知事となることが発表されています。
スシール・モディ氏は、以前の連立政権で、副州知事だった方です。
<過去のJDUとBJP(NDA )の連立と決別>
元々、ニティッシュ氏は自分の政党単独で州政府を運営したことはありません。
ずっと長い間、JDUとBJPの連立で選挙に勝利して来ました。
ところが、4年前、ナレンドラ・モディ氏がBJPから首相候補になった時、ニティッシュ氏は自分の方が首相になる実力があると、モディ氏に対抗し、BJPと連立を解消してしまいました。
そしてその後、なんと、ニティッシュ氏は、世界的に悪名高いラルー・ヤダブ氏が率いるRJDと連立を組んだのでした。
<世界的に有名な政治家ラルー・ヤダブ氏>
ラルー氏は、過去、州知事だった時代、汚職や様々な事件を起こし、刑務所に入っている間も、夫人を代わりに州知事として刑務所から指示を出していました。
共産主義系のゲリラであるナクサリライト(マオイスト)とのつながりも強く、警察を弱体化させ、ゲリラに協力してもらい、不利な選挙区を襲撃させたりしていました。
一族はマフィア化しました。
私が嫁入りした当時(98年)は、ラルー氏一族の全盛期で、夜間の外出は出来ませんでした。
<ニティッシュ州政府が起こした奇跡>
あまりの治安のひどさに中央政府が介入して選挙が行われ、2005年、ニティッシュ氏が州知事に選ばれました。
それから、ビハール州はまさに奇跡の変化を遂げます。
警察を強化し、ゲリラを撃退し、マフィアは息を潜めました。
<JDUとRJD・コングレスetc.の連立政権>
2015年、ニティッシュ氏はBJPと袂を分かち、RJDと連立を組みました。
副州知事には、ラルー氏の次男テジャスウィ氏を、また長男テージプラターブ氏を健康省大臣にしました。
それからこれまで、私たちは治安が悪化しないか心配しましたが、元マフィアが元気になったため多少の事件が起きたものの、さすがニティッシュ知事、なんとか治安を悪化させませんでした。
テジャスウィ氏は、元クリケット選手で、自分は父親と違い、クリーンな政治家だと自負していました。
しかし、他人名義での土地建物の購入など不正が明るみになり、辞職を求められていました。
<JDUとBJP(NDA)連立政権の州政府・再び>
実は、私はこの流れを数日前に少し感じていました。
インドの大統領が交代する際、前大統領プラナーブ・ムケルジー氏の送別パーティに出席した州知事はほとんど全員BJP所属の中、ニティッシュ氏とナビーン・パトナイク氏の2名だけが違っていたと言うニュースを見ました。
また、新しく選出された大統領のラム・ナート・コビンド氏は、これまで2年程ビハール州のガバナー(州の大統領)でした。
コビンド氏の大統領就任式では、野党からはニティッシュ氏だけが、BJP幹部の政治家たちと並んで最前列に座っていたと言う報道がありました。
コビンド氏は元々BJPの政治家です。
ここ数日、ニティッシュ氏がBJPの政治家達や、そしてモディ氏と距離が縮まっているな、と言う感じがしていたのです。
JDUとBJPの連立州政権が再びスタートします。
長年連れ添った夫婦が一度離婚して、再婚するような感じです。
ニティッシュ氏や連立州政府に入る方々には、個々の政治家としてプライドより、人民の安全や州の発展のためにぜひ頑張っていただきたいです。